地図と領土

要約すればわれわれの芸術家としての立場は以下のとおりである。われわれは商業的生産によって息の根を止められた職人仕事の最後の代弁者なのだ。

これは作中でウィリアム・モリスの言葉として語られる芸術家の立場。
それはともかくとして、読書メーターで誰かが村上春樹みたいと書いていたが、その通り、フランスの村上春樹みたいな印象だった。正直言って中盤まではだるい。作中に作者が登場するとかいかにもフランス小説な造りなうえフランス人ならわかる内輪受けみたいなネタばかりでいい加減退屈してたところで、第三部でいきなり作者がぶち殺されて目が覚める。ものの、その後も淡々と小説は続き、何もドラマチックなことは起きないのだが何となくするすると読まされる。
それにしても、この小説に出てくる「イギリス」とか「アングロ・サクソン」とかいうくだりを見ても、フランス人がイギリスに向ける屈折した評価ときたらね。