もう何枚目だ?…っていうラフマニノフのピアコン3番。好きなんだけど、それだけに最初に聴いた演奏が強烈に刷り込まれていて、どんな演奏を聴いてもつい比較してしまってイマイチのめり込めないという、因業な曲。でもこの演奏はとても気に入りました。もしかしたら刷り込まれ盤を凌ぐかもしれない。どこがいいかというと、音が果てしなく繋がっているところです。とにかく曲の流れが止まらない。テンポについてはところどころ、えええっ…という突然のスローダウンがあったり、もうちょっと飛ばして欲しいなあと思うところもあるけど、それでもゆるゆると流れる絹糸を伝うように、音の粒は切れない。私が聴いた限りこの曲、メロディラインはともかく、カデンツァや和音をガンガン叩くところになると、ペダルを多用しないで音がブチブチ切れた演奏が結構多くて(刷り込まれたワッツもそうだし、アシュケナージもそうだった)、好きなりに気になっていたんだけど、ゲルバーは徹底的に切らない。3楽章なんかペダル使用過多とも言える響きの渦で、好き嫌いが別れそうだけど、私は諸手を挙げて大好きです。カデンツァはなんだかこれまで聴いたのと違うバージョンみたいだ。

ところでジャケットの写真はゲルバー氏ご本人の目元のようですね。マリア・カラスかと思った。

クライバーの第五は3楽章がスゴイ! あのホルンの咆哮。ベースの疾走。派手な演奏好きには堪らんです。と言うとクライバーファンから「派手」じゃなくて「重厚」だ、と怒られそうだけど、どっちにしろ同じことです。血沸き肉躍る低音万歳。第五は断然3楽章が面白いと思います。1楽章は有名な冒頭の演奏の仕方が楽しみなだけで、あとはあんまり面白みがない。3楽章はほんとにいろんな演奏があって、どんな演奏を聴いても飽きない。前に他の人に聴かせてもらったCDに(どこの演奏だか覚えてない)、あの有名な3楽章のベースソリの1フレーズ、1フレーズの間にゲネラル・パウゼでも入っているかのような長い間を取っている演奏があって、拍子感が崩れてずっこけそうでした。でも面白ーい。

ちなみに、カラヤンバーンスタインクライバーで美中年マエストロ三羽烏だと思います。不覚ながら最近のクライバー追悼特集で、はじめて彼の男前っぷりを知りましたですよ。でも私はやっぱりバーンスタインが一番だけどね。