極私的シューマン強化月間。いやいつも強化月間なんですが。
というわけで、聞き慣れている録音にコンサバってないで、たまには新境地を開拓しようかとシフに手を出してみた。クライスレリアーナは謝肉祭と並んで私の中ではシューマンピアノ曲の双璧。刷り込まれ録音はよりによってアファナシェフ。あまり聞き比べたことがなかったんですが、一般的には変態な演奏ということらしいです。

その演奏家を気に入るかどうかというのは、歌い方や節回し、ための取り方といった呼吸が自分と合うかどうかが大きな分かれ目だと思うんですが、シフは残念ながらそれがちょっとしっくりこない。しかしそれを抜きにしてもクライスレリアーナは美しい演奏です。音色も仄暗く、妖艶でお耽美。ちょっとお化粧濃いかな、という印象は否めないけど。これと比べると、アファナシェフは荒削りでストレートに聞こえる。すっぴん剥き出しの狂気と言いますか。第1曲、第7曲はアファナシェフ盤が好き、第2曲と第3曲はシフ盤が好き。第5曲は両者甲乙つけ難い。で、ここから先は好き嫌いの問題。どちらが好きかと言われれば、やっぱり全体としてはアファナシェフでした。刷り込まれ盤って強固だ……。

交響的練習曲は第6変奏曲から第7変奏曲への流れで、圧倒的にアムラン盤に軍配。こうして聴き比べると、アムランの演奏が明確に曲間の流れを意識しているのがはっきりわかります。第6変奏曲の動から第7変奏曲の静へ。個別の曲ではシフの演奏のほうが好きなものも結構あるんですがね。特にフィナーレは目の覚めるようにシャープで輝かしい演奏。謝肉祭の冒頭とか終曲とか、こういう感じの演奏が好きなんだけどなー。全体にアムランに比べて華やかな演奏です。まあアムランが老成しすぎているとも言えますが。「交響的」という言葉の解釈の違いなんだろうな。


ちなみに、私が持っているアファナシェフのクライスレリアーナはこれ。
シューマン:クライスレリアーナ


アファナシェフはブラームスも素晴らしいです。ブラームスの枯淡の境地が鬼火揺らめく夏至の夜に早変わり。
ブラームス:ピアノ作品集