CD買うのに節操がないのはここを見ていただければ丸わかりなんですが、一つだけポリシーがあるとすれば、なるべく新しい録音を買うようにしていることです。古い録音に名盤があるのはわかっているけど、でもそれは言ってみれば当然の話ですよね。厳しい淘汰を生き残ってきたものだけが今日手に入ることを考えれば。今現在の演奏家が今の感覚で演奏するものをなるべく聴いたほうが面白いよなーと思います。最近は本ばかりでなくCDも栄枯盛衰激しいですからね。古典にはぶっちゃけいつでも聴けるという安心感がある。
というわけで、試聴コーナーで聴いて気に入ったので買ったのがこれ。
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲
ショスタコーヴィチにハマりはじめて意識して買い集め出したのはここ数年の話なのに、何だかんだで手元にはタコさんの録音が結構揃っていたりする。これもその1枚。確か買ったときにはメンコンのほうが目当てだったような。(うちのオケでやったときの参考CDとして買った記憶が)
ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲は初演者のオイストラフの録音がバイブルのような名盤と言われているけど、こちらは聴いたことありません。なので比較はできないけど、私は今のところハーンの演奏がお気に入り。
音色としては、どちらかというとクリアでシャープな感じ。あからさまに甘い音ではない。演奏スタイルも感情豊かというより、理知的な印象です。そのせいかメンデルスゾーンなどはあっさりめに聴こえるかもしれませんが、私はこの涼やかで颯爽としたメンコン大好きです。特に三楽章は素晴らしい快速。これだけのスピードで飛ばした演奏はハイフェッツくらいしか知りません。それでいて実に小粋でナチュラルな歌い方。ハーンの良いところは、この押し付けがましさのないナチュラルな歌い方だと思います。
この氷砂糖のようなメンコンにショスタコーヴィチを合わせてきたのがハーンらしいところ。どちらかというと、ショスタコーヴィチの荒涼とした音楽のほうが、ハーンのクールな演奏が活きていると思います。
聴いてみようかと思った方、1楽章を聴き始めて諦めてはいけません。1楽章は私も今に至っても意識が飛ぶこと多々。どんちゃん騒ぎ系が好きならまずは2楽章か4楽章(ただし、3楽章のあとに長大なカデンツァがあるので、実質5楽章ですか)からどうぞ。そして、何を措いても聴くべきは3楽章。この葬送行進曲のようなパッサカリアこそがこの曲の白眉だと思います。ショスタコーヴィチの曲の美しさはこういうコラールのような緩徐楽章に尽きる。ショスタコーヴィチはリズムや旋律は現代的でも、和音は非常に古典的な美しい響きを持っていると思います。低音楽器の分厚い響きがゆっくりと運ぶ旋律はしみじみ物悲しく、それでいてどこか諦観の漂う穏やかさが何とも印象的な1曲。