笑いごとじゃない

体力が衰えるにつれ、私の権勢は日増しに強くなっていった。私は自分には人に任務を与えるという天才的能力があることを再発見していた。私は病院よりホワイトハウスにいるべき人間なのだ。

(p70)

このおっさんは…。
ギラン・バレー症候群という奇病に冒されたジョーゼフ・ヘラーとおかしな仲間たちによるおかしな闘病記。ヘラーはあの『キャッチ=22』の作者。『キャッチ=22』のヨッサリアンそのまんまの、口が悪くて我儘でハチャメチャでいい加減で女好きで懲りない楽観的なんだか悲観的なんだかなキャラである。当然友人どもも、このおっさんにしてこの連中といった類友ばかり。全身の筋肉が麻痺して原因も治療方法も不明という重病を笑い飛ばし、洒落のめして楽しむタフさには脱帽もんです。
有象無象のキャラの面白さもさることながら、一昔前(1980年代前半)のニューヨークの雰囲気が伝わってきて面白い。まだ貿易センタービルが完成していなくて、でも中華街はあって、DEAN & DELUCAがあって、メル・ブルックス(『プロデューサーズ』)やポール・サイモンサイモン&ガーファンクル)やマリオ・プーゾ(『ゴッド・ファーザー』)が活躍している頃のニューヨーク。