ブラームスと半眼訥訥

高村作品は初期のものしか読んでいないのだが、一番印象に残っているのは『リヴィエラを撃て』(文庫版、と一応断っておかなければならないのも高村作品ならでは)だ。いやあ腐女子が萌える要素満載。これで二次創作が勃興しなければその方がおかしい。私のお気に入りは実は駄目男ダーラム侯と不運刑事キムだったりしますが、それはさておき、『リヴィエラ』と言えばシューマン、高村と言えばブラームスである。特にブラームスのピアノ協奏曲第二番は作中での劇的な使われ方で、読んだ当時まだこの曲を聴いたことがなかった私はもう期待しまくっていたわけですよ。
で、後に初めて聴いた印象は、「あり…???」。一楽章から三楽章まではいい。特に二楽章のドラマチックな曲想は大好きだ。その後にしみいるような緩徐楽章が来るのも、否が応にも期待感を煽る。なのに、あの四楽章。これが何ともあっかるーいのだ。この能天気な明るさが、どうにもあの作品に結びつかない。
うちにあるCDはカッチェンが弾いているものなんだが、ひょっとしてピアニストによって全然印象が変わったりして…という好奇心というか藁に縋ってみるというか、高村さんがモデルにしたらしい、ポリーニアバド盤を図書館で見つけたので聴いてみた。うーん、ポリーニのほうが確かに全体に色気のある演奏だけど、でも四楽章はやっぱり能天気だ。うーんうーん。私のブラームスの捉え方がおかしいのか。ライナーノーツの解説にも「イタリアの陽光を思わせる明るいもの」と書いてあるんだけど。(よく考えたら演奏しているのもイタリア人コンビではないか!)
ついでに高村さんのブラームス観を書いたエッセイが入っていると聞いたエッセイ集も借りてみた。うわーこの人一人称「わたくし」なんだ、とか、この人小説はいいのにエッセイはまるっきりオヤジの○○言、とかいうファンに殺されそうな感想は措くとして、高村さん交響曲二番が好きなのね。私はどっちかと言うと三番派。建築のように緻密に積み上げる構成が好きというのは、高村さんの作風からすごく理解できる。でも憧れるのはシューマンの天才的なひらめきってところも。