普通の家族がいちばん怖い

  • 『普通の家族がいちばん怖い』 岩村暢子(新潮社)

同じ著者の同じテーマの本を三冊も読むと、全部同じことが書いてあるように思えるな。副題が「徹底調査! 破滅する日本の食卓」なんて言う煽り文句で、まあしかし何をもって「破滅する」と言うのかには議論の余地があると思います。本書では家庭のイベントとしてクリスマスと正月にスポットを当てて各家庭の状況を聞き取り調査していて、おそらく正月でも菓子パンが並ぶような食卓とか、クリスマスの飾り付けや電飾は一生懸命やるのに、料理はケンタッキーフライドチキンで済ますとかいう状況を「破滅」と言っているのでしょうが、大体クリスマスを祝う習慣なんか戦前はなかっただろうし、正月の御節だって一昔前は地域によって相当ばらばらだったはずで、お重に詰めるパターンは都市化に伴って料亭だか仕出屋だかが作り出した形態だってどこかで聞いたことがある。私も聞き取り調査されている家庭のクリスマスや正月の様子に、ああうちもこういうことあったなーと思うことが結構あって、それが「破滅」しているかと言われると、うーん…という。
食卓とか家族団欒の崩壊だとかより著者が言いたいのは、エピローグの「現実を見ない親たち」のことなんだろうな。言ってることとやってることが全く結びついていなくて、しかもそれに無自覚で、しかもそういう人が母親でそこに子供がいる、という点。そういう人は昔だって一定数はいたはずだけど、それがマスになったら…ということでしょうね。