落下傘学長奮闘記

  • 『落下傘学長奮闘記―大学法人化の現場から』 黒木 登志夫(中公新書ラクレ

サブタイトル通り、大学法人化の現場からのルポ。東大の研究者から岐阜大の学長に転身した先生の、単なる学長体験記には終わらない、図表をふんだんに駆使した立派なルポです。大学の先生のご本っていうのは、どうも文章が硬くて読みにくいものが多いんだけど、この人はとても文章が上手い。適度に自画自賛系ユーモアを含んだ、とてもわかりやすく読みやすい本でした。サービス精神が旺盛な先生なのですね。こういう面白い学長さんがいる大学に行きたかったな。
私の場合、卒業してからいつのまにか母校が法人化されていたという感じで(おお歳がばれる)、法人化前の大学しか知らないわけですが、確かに入学してなんとぬるいところかというのが正直な感想でした。それまでの中高でのぎゅうぎゅうの締め付けが一気になくなった真空地帯というか。学生だけじゃなく、教員も事務員もそういう印象で、ぶっちゃけ天国でしたけれども、ずっといると人間駄目になりそうな雰囲気もひしひしと感じましたっけ。そこに競争原理が持ち込まれたのはある意味歓迎すべきことだと思いますが、持ち込むべきなのは大学としての評価や実績に関する部分で、経営に競争原理を持ち込んではいけないと思います。最近学生の質が悪くなったとか、学力が低下したとか言われますが、それは大きくはこれまでの教育制度が齎した結果であって、学生自身だけの責任じゃないよね。
と、かつての駄目学生は責任転嫁してみたり。