帝都ウィーンと列国会議

帝都ウィーンと列国会議―会議は踊る、されど進まず (講談社学術文庫)

随分長らく積んでいた本だけど、つい先日たまたま手にとって、あまりの面白さに一気に読了。電車の行き帰り、昼休み、手の空いた勤務中にまで、かつての授業中の内職のようにこっそりと読み耽りました。すみません、駄目社会人(てへ)
今まで積んできた理由は明白。ある程度、歴史背景の基礎知識が頭に叩き込まれていないと、話に全くついていけないからだ。ウィーン会議ナポレオン戦争の後始末会議であること、神聖ローマ皇帝と言えばドイツ王で当時はオーストリア・ハプスブルグ家の専売特許であったこと、ベルリンと言えばプロイセン宮廷、ドレスデンと言えばザクセン宮廷、ミュンヘンといえばバイエルン宮廷、副王と言えば総督のこと。他にも普通の世界史の授業じゃまず聞かないようなヨーロッパの国名や地名、人名が入り乱れ、しょっちゅうGoogle様のお世話になったものの、面白く読み通せたのは、今はある程度知識が蓄積されていたからだろう。多分、買った当初は歯が立たなかったと思われ。そんな状態でなんで買ったんだとも思うけど、人間って興味の方向性はあんまり変わらないものだよね。こうやって何年か寝かせて自分が追いついてきてから読み終える積読本って結構ある。
本書ではウィーン会議のドタバタを描く前に、そこに至るまでのナポレオン戦争の経緯と、ハプスブルグ家とウィーンの歴史の概観に全体の約三分の一を費やしていて、単にウィーン会議の経緯だけに留まらない。この背景説明があるから会議の空転振りが面白いし、主催都市ウィーンのお祭り好きの気風も生き生きと浮かび上がってくる。何より著者の筆致は物語風というより講談風の歯切れの良さで、豊富なエピソードを満載し、始終脱線しながらもぐいぐい読ませる。歴史物で久々の大当たりでした。
しかしこの本、今見たらAmazonで品切れ。なんとまあ勿体ない。