代替医療のトリック

一週間延滞してのたのたと読了。
代替医療の効果を科学的に検証しようという趣旨で、特に取り上げられているのが、鍼灸ホメオパシー、カイロプラティック、ハーブ療法。とりあえず挙がっている代替医療はほぼ全部プラセボってことでけちょんけちょんだった。で、著者両名はプラセボ医療には批判的。理由は、プラセボをやろうとすると必然的に医師が患者に嘘をつくことになり、それは医療の真実をごく一部の特権的な層に囲い込むと同時に、インフォームド・コンセントの精神に反するから、とのこと。こういったやり方は「家父長制的」とまで言っていて、そうかー、欧米でのある一定以上の階層への悪口の定番は「レイシスト」だと思ってたけど、「家父長制的」っていうのもアリなのね、と関係ない感想を抱いたり。
むしろこの本の主眼は、代替医療そのものよりも、代替医療ビジネスの不誠実さと害悪を啓蒙しようという意図のよう。確かに、ホメオパシーの「レメディ(薬)は薄めれば薄めるほど効果がある」という主張とか、カイロプラティックが喘息に効く、とか聞かされたら、常識的におかしいと思うんだが、そういうことを知らないで医療機関や信頼している知人から紹介されたら、ついうっかり受診してしまうということもあるだろう。とにかく、内実をきちんと知ってくれと。そして科学的医療以上の効果が確認されていない療法に、個人のお金もさることながら、政府の資金を注ぎ込むのはやめようぜという話。
しかし実際のとこ、鍼灸がここまで欧米に普及してて公的な業界団体があるってことを初めて知ったし、各国政府が代替医療にかなりの助成金を出していたりすることも(イギリスのホメオパシー病院とか)初めて知って、かなりびっくりだった。科学的医療にさえも全幅の信頼を置いていない私の場合、代替医療は信頼する余地がほとんどなくてなあ…。常識的に効くだろうと思われる範囲でしか試そうとは思わない(筋骨格系症状へのマッサージや整体とか、プラセボ的なハーブとかね)。
冒頭に代替医療に肯定的な発言続出の英国皇太子への献辞があるんだけど、これはイギリス人らしい皮肉というわけでした。