絵で見る十字軍物語

絵で見る十字軍物語

  • 『絵で見る十字軍物語』 塩野七生/ギュスターヴ・ドレ 絵(新潮社)

ドレの版画に七生がちょろちょろ文つけただけで2000円超四冊配本かよ商売上手えなコンチクショー! とTLで大評判(笑)だったこの本ですが、ええゲイツされましたとも。こういう神経症的な線画は好きでして。おまけに知識真っ白けの十字軍の入門書になるなら一石二鳥と言わねばなるまい。いやほんと、なかなか勉強になりました。
十字軍ってこれまでどう考えてもその心が理解できなかったんだけど、多分いきなり攻め込まれたイスラム教徒側もそういう気持ちだったんじゃないかしら。目的が領土拡張とか単なるかっぱらいとかならともかく、宗教上の聖地が欲しい異教徒逝ってヨシのためだけに、当該地域の予備知識も下準備も系統的な組織作りもほとんどなしに、それゆえ相当に悲惨な思いをして遥々遠征に来るって、全く理解不能だったろう。おそらく現代、イスラム原理主義に感じるのと同じ理解不能さを、イスラム教徒側は感じたに違いない。しかしこれが結局現在にまで続く中東問題の原因なんですね。根深い。
ドレのエッチングはところどころ時代考証がおかしな感じがあるし、構図上の視覚的効果のために縮尺(特に上下の)がおかしかったりするのが面白い。