大本営参謀の情報戦記

  • 大本営参謀の情報戦記』 堀栄三(文春文庫)

太平洋戦争当時の日本の指導層がアホだったことはまあ明白な事実だと思うんですが、これ読むといたたまれなくなるなあ。米国は子供騙しみたいなもんで、さぞかし笑いが止まらなかったことだろう。大局的にはお茶の子だった米軍が想定外に苦戦したのが、大本営の細かい指示を受けず前線指揮官が自分で判断して行動した部隊との上陸戦だったというのには、もう何とも。
著者が強調する制空権については、太平洋大域を戦場にして制空権がないアホらしさは、大和ミュージアムで米軍が撮影した航行中の帝国海軍戦艦の詳細な航空写真を見てほとほと感じましたです。砲門の数や回転角までばっちりわかる。
内容的には回想録だと思うんですが、著者は客観性を保つ意図で一人称を使わずに自分のことを「堀」で通しています。ところどころ箍が緩んで美談くさくなったり、主観的な心情がにじみ出たりもしますが、全体としてとても抑制の利いた、主観に引き摺られる部分が少ない記述と思われます。それでも微妙にぼかして書いている部分がちょこちょこあって気になるなあ。他の資料対照したらわかるかしらん。つい回想録などはこういうゴシップ的興味で読んでしまう悪い癖。