現代の貧困

格差や不平等は、さしあたり「ある状態」を示す言葉である。つまり、ある社会においてAチームにいる人とBチームにいる人とに分かれているとか、高所得の人と低所得の人がいる、というような「ある状態」を示す、記述的な言葉である。そうであるから、格差は、それを問題にすることもできるが、「格差があってどこが悪い」という開き直りも可能である。あるいは、格差を問題にする場合も、どのような格差が問題か、という問いを別に立てる必要が出てくる。
これに対して貧困は、「社会にとって容認できない」とか「あってはならない」という価値判断を含む言葉である。また、貧困が「発見」されることによって、その状態を改善すべきだとか、貧困な人を救済すべきだとか、Bチームの中に広がっている貧困を解決すべきだといった、社会にとっての責務(個人にとっては生きていく権利)が生じる。

(p28-29)
しかしこの本のあとがきは、学者の言としては正直すぎ。「だってー信頼できる資料も統計も全然揃ってなくて全体の動向については何も確実な回答ができないしー、かと言ってフィールドワークでの現場の生々しい状況をこーゆー一般人向けの新書でぶちまけるのもちょっと〜」というのは、これまでいかに日本社会が現実の貧困に蓋をしてきたかを示すものではありますが、一般人の読者としては、まあわかるけど言い訳はいいから研究に邁進してくださいとしか言いようがないっす。