ラフマニノフ ある愛の調べ』を見てきた。Bunkamuraル・シネマ。
映画としてはビミョウだったけど(全編ロシア語! アメリカが舞台なのにスタインウェイの社員までロシア語!)、隅から隅までラフマニノフの音楽漬けでうっとりだった。映像も美しかった。美しいものは、美しいものを見てきた人間でないと作り出せないって、誰がどこで言った言葉だったか忘れてしまったけど(最近ほんとに、こういうどこかで見たり聞いたりしたのの出典が思い出せない)、それって真実だろうなあと思う。ロシアの貴族階級に生まれ育ったラフマニノフが中年を過ぎて移り住んだ新興国アメリカが、彼の目にどのように映ったか想像するだに切ない。同じようにロシアから亡命の後、渡米したナボコフはそれでもアメリカで次々と作品を発表したけれども、ラフマニノフは渡米してからはめっきり作品が発表されなかったはずだ。(パガニーニ・ラプソディと交響的舞曲くらい?)
あと、アメリカの資本主義が音楽家をプロモーションし消費していく様子が描かれますが、この時代からすでにこうだったんだなあと。時代が下って、チャイコフスキー・コンクールの初代優勝者ヴァン・クライバーンも、アメリカに凱旋してから演奏旅行でもみくちゃにされ、腕の筋疲労でボロボロになって休養を余儀なくされたりしたわけですが。商業主義ってオソロシイ。

ところで、Bunkamuraの向かいのシネ・アミューズで『靖国』をやっていたんですが、驚いたことに警察庁が警備に張り付いていた。映画館の前にダークカラーの警備車が横付けし、入り口に警官が立っていた。いやはや。