美しすぎる母』を観てきた。原題はSavage Graceだそうで、こっちのほうがかっこいいな。でも訳しづらいのも確か。
自己愛の強い女性がいかにして自分とその息子を破滅させていくかを描いた作品。バーバラ・ベークライトは非常に自己愛が強い分、その裏返しで依存心も強い。彼女のナルシシズムは依存する相手がいないと満たされず、その相手を繋ぎとめるのに彼女はセックスを使うことしかできない。そんな関係から夫は逃げ出し、息子トニーが母親を「相続」することになる。夫を含め出てくるのは皆どこか歪んだところのある人々ばかりなんですが、中でも母親に依存されたトニーの悲惨さは堪らんです。
一方で、依存する相手が息子だったから、ああいう古典悲劇的な、ある意味一気に解決な結末になったんでしょうが、これが娘だったらどうだったのかとも思ったり。タブーというSavageを覆い隠したところにGraceがあるのでしょうけど、母親と娘の関係にGraceはなさそうだな。近親愛と近親憎悪の条件付けって興味深い。