OUT 下

女、それも主婦を主人公にしたハードボイルド。ハードボイルドは一種のドリーム小説だから、本作が女性読者に受ける理由がわかる。これ読んでると宮部みゆきとかの小説が如何にいいひとばかり登場してるかわかるな。というか、ろくでなしが登場しない。解説に松浦理英子が「階級が描かれている」と書いているけど、確か渡部直己も同じこと言ってたな。
ただ最後の雅子と佐竹の対決(というか絡み)の部分はどうかなーと。佐竹の動機にも描かれる雅子の心理にもいまいち説得力ないんだよね。同じ場面を視点人物を替えて描写するのも、なんかちょっと素人くさい(そこに叙述トリックか何かがあるんならともかく)。
しかし女性が書いているだけに、女のろくでなしの描き方が徹底しているのが良かった。実際こういう女とは絶対につきあいたくないと思うのは城乃内邦子じゃなくて(こういうタイプはまだ可愛い)、山本弥生のタイプだな。佐竹の山本弥生への侮蔑の視線は、著者の感覚なのかなと思ったり。「女」だからでなく「主婦」だからと蔑む感覚は、男というより女からの視点に思われる。そう考えると、登場する女たちへの佐竹の視線というのは、著者の視線のある側面を代弁しているのかね。