仮想儀礼 上

「いや、違います。神の概念が、人を支配する。確実な力を持っている。これは象徴的な出来事ですよ。桐生さん、何かが変わってきたんですよ。日本人が気づいてないだけだ。世界は宗教の時代に入った。今までみたいな、社会風俗としての宗教の時代じゃなくて、システムの根底にかかわる宗教がこれからは僕たちを動かしていくんですよ」

(p23)

久々にフィクションを読んでおりますが……篠田節子ってこんなに面白かったっけ?! すごい初期のホラーテイストの数作しか読んでなかったから、目から鱗。かなり大部の上下巻だけど、上巻は二日もかからずに一気読みした。すごいドライブ感。食い詰めた中年男二人が新興宗教で金儲けしようとする、一歩間違うとものすごく泥臭い胡散臭い話になるテーマを、ものすごく地に足のついたリアルさで微に入り細に入り描き、畳み掛けるようなイベントの波状攻撃で読者の気を一瞬たりとも逸らさず、ドタバタ・コミカル感さえ漂わせるのがすごい。「甘えの構造に下半身をどっぷり浸らせた日本人」とか、「永遠のマザコン」とか、「腐臭漂うような「泣ける話」」とか、随所に光る毒舌も素敵。これ傑作じゃね?
下巻が楽しみだけど、しばらく順番回ってこないだろうな……100人くらい予約待ち入ってた…。