昭和天皇・マッカーサー会見

表題は「昭和天皇マッカーサー会見」になっているけど、内容は終戦直後から戦後体制が固まるまでくらいの間の昭和天皇の動きに焦点を当てている。法学者なので憲法国際法に照らした分析が緻密で明快。条約の内容などを詳しく知らないと理解できない部分もあるけど、全体として非常に面白かった。
これによれば、昭和天皇は戦前も戦後も、時として立憲君主制下の君主、あるいは象徴天皇の枠組みを超えて活動していて、それは事実上「政治活動」、「外交活動」と言えるものであったと。そして特に戦後の「外交活動」は、日米安保条約締結へのレールを敷くものであったという。戦後の日本には「極東のスイス」になる、つまり米国の傘の下に入らない路線も選択肢として存在していたけれども(それこそ実はマッカーサーの当初の意図だった)、それを安保条約の側に引き寄せたのは天皇の外交活動だったという説は斬新。その動機が、天皇にとって日本の防衛と天皇制の防衛は同義であった(p191)からだというのは、立場上の限界だったのだろう。
靖国神社を巡る天皇の意思と右派の議論が食い違う現状分析も明快。靖国参拝を行った小泉元首相に対しては、背景まで深く考えておらず狭い視野での判断だとしてボロクソである。あああ(笑)