外人術/物語 ドイツの歴史/ヒューマン・ファクター/面白南極料理人

旅行中に読んでいた本。
読む本が切れては買いを繰り返しているうちに旅行中に三冊も買って読み終えてた。うちにある積読、全部スーツケースに詰めて旅行に出れば、全部読み切れるんじゃないかと思う。
外人術―大蟻食の生活と意見 欧州指南編 (ちくま文庫)ヒューマン・ファクター―グレアム・グリーン・セレクション (ハヤカワepi文庫)

映画は観に行ってないのですが、多分この本にあるようなおっさん臭とは無縁だっただろうから行かなくて正解だったと思う。キレイに髪をカットして出発したとしても、一年後にロン毛になってないなんてこと有り得ないよ。小奇麗な南極越冬隊なんて有り得ないよ。小奇麗な僕地球的ドーム生活より、山男風おっさん臭のほうが面白いと思うよ。体験したいかどうかはともかくとして。

これは傑作。ダシール・ハメット式のざーとらしいハードボイルドに辟易している向きには最適。イギリス小説って地味でいいよなあ。彼らは日々の圧倒的な退屈を紛らわすのに必要なのは、血湧き肉踊る冒険でもアクションでもメロドラマ的エンタテイメントでもなく(こういうのはむしろスピーディーな日常の中でスピーディーに読むべき)、心理小説なのだとわかっている。現実の情報部員に007的華やかなところは何もなく、むしろ単調な事務員の仕事に限りなく近いというのは、『エニグマ・コードを解読せよ』を読んでも思った。それにしても出てくる人また人の圧倒的な孤独。彼らの社会背景から心情まで余すところなく描く会話が唸るほど巧い。

サルでもわかるドイツ通史的なものを求めていたんだが、これは一通りの世界史の背景知識がないとちょっと難しい。文章も結構読みづらい。「物語」という題名には偽りありです。通史的な部分は結構端折っていて、阿部先生お得意のアジール論のほうに力点が置かれている感じ。近現代史は私の乏しい知識から見てもちょっと端折りすぎかと。イタリアとの関係はかなり詳しく書かれているけど、隣国フランスとの関係史が薄くて隔靴掻痒の思い。

昔図書館で単行本を読んだので再読。でも何度読んでも愉しい。長らく絶版だったのが文庫化されて本当に嬉しい。読書用と保存用の二冊買おうかと思ったが、さすがに我に返ってやめました。フランス人は意地悪で英語を喋ってくれないのではなく、本当に喋れないのだということは、大昔ですが欧州貧乏旅行したときの経験から激しく同意です。迷える旅行者がうろうろしていると親切に声かけてくれるんだけど、こっち(壊れた英語)も向こう(フランス語)もさっぱり意思疎通できずに終わったりする。で、とりあえずメルシーと言って別れて、別の人にまた道を訊く、と。