棄民たちの戦場

ゆるいドキュメンタリーだ。ほとんど義務感で読み通した。
第二次世界大戦中の米国で米国籍の日系人強制収容所に送られたことは、確かに露骨な人種差別だった。その差別を克服して社会の信頼を得るために戦争に志願し、欧州戦線に送られた日系人部隊がいたことは知らなかったし、自分たちを差別する国で生きるためにその国に忠誠を尽くさざるを得ない彼らの引き裂かれた意識と、その消耗品扱いのような実戦投入のされ方は悲劇的だ。それを紹介したことには意味があると思うけど。
日系部隊のことをやたらと「黄色い」とか「キツネ目の男たち」とか表現するのは、それこそ人種差別的な書き方じゃないの? それに、日系部隊の規律正しさ、著者が接触した日系人たちの立派な態度について、何かと言えば「武士道」とか「日本人の魂」とか「日本人の血」とかいうのも気に入らない。ここでの問題は、黄色人種とか日本とか米国籍とかいうものは一体何なんだってことじゃないの? 人間それぞれに文化・社会的背景があるとしても、個人の資質を民族や人種の特性だけに帰結させる考え方こそが差別の温床だろうに。
どうもこのごろアサ○コムの書評記事はハズレが多い。