ハンニバル戦記

単行本に切り替え。激闘カルタゴVSローマ編。読んでて全般的にハンニバルが酷薄な印象に描かれているのは、残っている資料がローマ側のものばかりという点から割り引く必要があるかもしれない。それにしても、ハンニバルの兵の使い方は湯水の如くという感じで、さすがはお金持ち。対するローマは涙ぐましいまでに質実剛健、常識的、効率を追求してしまり屋さんだ。これはローマ軍が市民兵主体で、カルタゴ軍が傭兵主体という違いなのかもしれない。カルタゴ本国の対応の悠長さとピンボケ加減も、経済大国として君臨して久しいが故の驕りだったのかも。
しかし第二次ポエニ戦役まではともかく、第三次ポエニ戦役はローマ贔屓の作者がどう弁護しても、ローマ側に正当性はないように思えるな。徹底的に破壊・殲滅した挙句、土地に塩まで撒くというのは、何か恐怖か私怨じみたものを感じる。もはやハンニバルはいないのに。覇権国家になると、その地位から転落する恐怖という新しい敵が現れるんだろうな。
ところで、この本に載っていたカルタゴ市街図に描かれている港が、こないだカルタゴ展で見てきたものそのまんまでちょっと感動。しかしこの構造は格好いいけど、出口を塞がれてしまうとどうしようもないという欠点があるんだな。