ユリウス・カエサル ルビコン以前

消化試合のような前巻と打って変わって、これまでにない分厚さの上下巻である。カエサルたん、好きだったんだね…。
しかし確かに可愛いおっさんではある。四十くらいまで鳴かず飛ばずで借金と女たらしだけでのらくらしてるか権力者にあっさりNOと言って逃げ回っているかだったのに、四十過ぎから突然三頭政治で頭角を現し、八年もの間ガリアに遠征して敵地を平定して回り、それを自分でレポして出版して大人気になるという凄腕セルフプロデュース。適当なようでやるときはやる型の大物が多いですよね、ラテン人。人生楽しみながら生きるとこうなるのか。
しかし、飢饉で部族の移動が起こりつつあったとは言え、特にまだローマに対して深刻な情勢でなかったはずのガリアにわざわざ乗り込んでいって、そのことで結果的に諸部族の蜂起を促してしまったようなガリア遠征だけど、多分カエサルたんはこういうことが好きだったんだね。つまり、諸国漫遊しながらどんぱち、というのが。若い頃にスッラの迫害から東方に逃げたときにも、東方属州の軍に加わったり自分の私兵を使ったりして似たようなことをしていたようだけど、各地を転々として、そこで持ち上がる日々異なる問題を処理していくっていうのがスリリングで楽しかったんじゃないかな。下巻でこれから展開されるポンペイウスとの内戦がなかったら、案外長いこと属州に留まってローマに戻らなかったんじゃないかという気がする。勿論、ローマの情勢は遠隔操作しながら。骨がらみの政治好きだな。