背徳のクラシック・ガイド

昔に比べて最近めっきりクラシックのCDを買わなくなった。オケで演奏する曲の参考音源として買うのがほとんどになってしまった。試聴コーナーでいろいろ聴いても、余程面白い演奏やアレンジでなければ、すでに所蔵している曲であれば重複して買わなくなった。いつのまにか、私は現場主義になっちゃったのだ。つまり、どんなに下手でも生が一番。下手な演奏を客席でこき下ろしながら、或いは手に汗握りながら聴くのも楽しいし、自分がまさに現場=舞台に座って手に汗握りながら演奏し、音の只中に参入するのも堪えられない快感。CDは参考音源としてやばいところチェック即ち選曲の予習として聴くとか、スコアと見比べながらやばいところチェック即ち譜読みするとか、教材的に使うことが多くなった。勿論、純粋に音楽を聴きたくてCDをかけることもあるけど、一通りお気に入りのものが手元に揃ってしまったから、ついつい新規開拓が億劫になる。
そういう怠惰なクラシックファンに活を入れるのがこの本。いやまあ、アグレッシヴなセレクトである。げてものと言ってもいい。けど、わざわざ所蔵するなら、正統派の無難な演奏より、どこかに光る(笑える、でも驚く、でも鳥肌が立つ、でもいい)ものがある、面白い演奏のほうがいいじゃない? 悪趣味万歳なんである。
クラシックの古典的な名曲から近現代の無名な曲、コミックミュージック、へんてこ曲名シリーズ、キワモノ編曲版まで幅広く紹介されてて、その紹介文がまた面白くてつい買ってみたくなる。とりあえず、ショスタコーヴィチ交響曲第5番古楽アンサンブル版(アンサンブル音楽三昧)っていうのは是非とも聴いてみたい。あとストラヴィンスキー春の祭典」のギター版(ラリー・コリエル)、ユリ・ケインのマーラー編曲ものにも興味津々。