仮想儀礼 下

予約待ちの長蛇の列で、これまた上巻から半年のブランク。しかし難なくストーリーに復帰できる親切設計。篠田節子ストーリーテリング凄まじい。淡々とテンポよく、必要以上におどろおどろしくなく、むしろ乾いたルポタージュのようにストーリーを進めていく筆致には脱帽。大傑作。
「狂信者」がいかにして生まれるかを描いた作品だと思った。教団がクライシスへ真っ逆さまに落ちていくなか、教祖の正彦だけがもう泣けるほどまっとうなメンタリティを保ち続けていて、主人公自身が現代の宗教を巡る様相への批判的視点となっているんだが、その正彦もまた、最後の最後の瞬間に、宗教の側に引きずり込まれる。矢口が「殉教」したくだりの記述は、この作品の白眉であると思う。「解脱」とは、この作品の結末の、当事者以外にとっては何とも言えず後味が悪く、不気味な状態を指すのかもしれない。