カラヴァッジョ 天才画家の光と影

『カラヴァッジョ 天才画家の光と影』を観て来た。銀座テアトルシネマ。
画面の色彩がカラヴァッジョの絵そのものだった。登場人物の衣装も美しくて、コスプレ好きには堪えられない作品。イタリア人たちがかぶっている、あのたっぷりしたベレー帽みたいな帽子、すごくいいなあ。素敵。
カラヴァッジョのキャラクターはちょっと現代的だったような気もする。カラヴァッジョとその友人のマリオとの関係は同性愛を匂わせるものなんですが、カラヴァッジョはそれを「キリスト教徒でも異教徒でもない、ただの愛」と言う。この宗教の超越の仕方は或いはローマ的かも。
しかし、多分、光と影の秘密を最初に解いた画家はダ・ヴィンチではないかと思う。モノは面で構成されていて、光が当たることによる陰影がその輪郭をかたちづくるということを、最初に示してみせたのは彼だったはずだ。カラヴァッジョの絵は、その陰影を極端に強調している。陰の部分を陰として、見えるがままに――彼にとって見えるがままに――黒く塗りつぶすということを最初にやったのが、カラヴァッジョだったのだろう。明るくて細かな背景がきっちり描き込まれた絵を見慣れた人々にとって、彼の絵はさぞやドラマチックで鮮烈だったに違いない。彼の絵は、キリスト教の持つ暗さを、計らずも白日の下に晒したように見える。