ザ・ロード

ザ・ロードを観て来た。(7/11)
朝10時の映画祭でカサブランカを観ようと六本木に行ったらなんと売り切れ。仕方なく転進したのがこの映画。以下ネタバレありますので、これから観ようという方はご注意。


ヴィゴ様が出ている終末映画という程度の予備知識しかないまま観たんですが……私にとってはメル・ギブソンの『パッション』以来の嫌げ映画でした……。ざざっとネットを見ると結構評価高いようなんですけど、正直ちょっと不思議。ヴィゴ様が出てるから〜…程度の覚悟で行くと、確実にその日一日どんよりしてしまう欝映画だ。
キリスト教をあまり知らない私でも、重苦しく暗い映像は黙示録の暗喩に満ち満ちているとわかる。荒廃した道路に林立する傾いだ電柱は処刑の丘の十字架の列を思わせるし、陸に乗り上げた船もええと何だっけ、何か聖書のイメージにあったような気がする。逃避行する父子が見つけた食料豊富な地下室はキリスト教初期のカタコンベのようだし、父親が体調に異変を来たし始めた頃に父子が野宿するのは破壊された教会で、二人が横たわる真上には、外からの光にそこだけ明るく光るステンドグラスの十字架。
父子が交わす会話も、短いながら聖書のイメージに満ちている。息子は僕たちは「善き人」なんだよね、と父親に確認し、父親は、俺たちは「(心に)火を運んでいる」と言う。途中で出会った老人は息子のことを天使かと思ったと言い、父親は我が子のことを神のような存在だと言う。
うーんこれ、映像だから強調されているということもあるんだろうけど、台詞もわりと原作の小説に忠実だというし。こういう小説がベストセラーになってピュリッツァー賞獲っちゃうっていうアメリカこそがとても終末的じゃないかと思ってしまう。
キリスト教の素養がない人間が単純に筋を追ったKYな感想を言うと、結局父親は最後まで献身的に息子を守って死んでしまうんだけど、あれではお父さん、浮かばれないのではないかと思ってしまった。お父さんが一生懸命守ろうとする息子は可愛くて素直かもしれないけれど、実際的には結構抜けていて、10歳くらいという年齢を差し引いても頼りない。一生懸命食料を探したり怪我をした状態で重い荷車を引くお父さんをあまり手伝うでもなく、逃げなければいけないときもびびって動けず。息子が善意或いは良心の象徴と考えると、こういう極限環境ではこういったものはお荷物である、ということを逆説的に示しているのかとさえ思ってしまった。
その上、お父さんが死んでしまった後、息子はすぐに、幸運にもと言うべきか、善意の子連れ夫婦に拾われる。母親らしい女性が、ずっとあなたたちの後をついてきたのよ、と言う。そう言われてみると、それまでに彼らが近くに存在したような徴にあちこち思い当たる。とすると、孤軍奮闘してきたお父さんの立場は? とか思ってしまう。一心に信仰した人に必ずしも生前に救いは訪れないのかと。穿ちすぎですかね? でも黙示録的終末思想の映像化を取っ払った後に、この作品に価値があるとすれば、そこらへんくらいだと思うんですが。