日本人のための日本語文法入門

職場で対日本人スキルがほとんどない外国人を相手にする上で、いろいろ参考になる本だった。特に日本人がほぼ無意識に使っている、ニュアンス(本文中ではムードと言っている)を出す表現について。彼女の日本語がどうして時々凄まじくかちんと来るのか(それでいて本人には全く悪気がなさそうなのでこちらも怒れない)納得した。彼女には日本語のニュアンスを出す表現が使えていないのだ。日本人は空気を読むと言われるけれど、実際には多くの場合、こういった表現の端々からムードをメッセージとして受け取っているのだろう。
一方で、自分の日本語の基準が、正しいとされる日本語文法からかなりずれていることにも気づいた。
一番気になったのが自他動詞で、文法的には自動詞と他動詞で同形の動詞なのだが、私は「する」「される」を使い分けないと気持ち悪い。「オペレータがデータを入力する」はOKだけど、「コンピュータにデータが入力する」は「入力される」でないと気持ち悪い。
本文中に挙げられた例文でも、日本語として不自然として挙げられたものに違和感を感じなかったり(p188、「明日は晴れると思っている」)、文法的に正しいとして挙げられたものに違和感があったり(p134、「日本に来る時に、友達がパーティーを開いてくれた」。「日本に来る前に」じゃないと意味不明だと思う)した。
職業柄壊れた日本語やら壊れた外国語やらたくさん見るから、感覚が麻痺しているのかもしれないし、特に英語の文法に引き摺られているのかもしれない。本文でも紹介されていたように、方言による慣用表現の違いもあるに違いない。いずれにせよ、言語は変わっていくのだと身を持って実感した。