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『日本精神分析』は例によって何故うちにあるのかわからない。読んでいてこう、えも言われぬ反感が湧き起こる本はニーチェ以来だ。そもそも初っ端のイントロダクションから
私は一度何かを書くと、それを続けて発展させるよりも忘れてしまう習癖があります。むしろ、書くということは書いたことを忘れるためだ、と考えているぐらいです。
などという言辞でカチーンと来る。それじゃあ何か。書きなぐった後は「記憶にございません」、言いっぱなしで責任は取らんってことか。いやしくも文筆業で食っている人間の台詞とは思えない。
講演集のはずなのに無闇と読みにくく、書いてある議論の是非はよくわからないものの、とにかくやたらとデリダだのソシュールだのラカンだのという舶来思想家を持ち上げ、自分以外の日本人批評家の名前を出すときはほぼ全て貶すとき、というやり方には好意的になりようがない。