死者の書

最初に買ったときには予備知識なしで書店の平積みから自分で選び出し、ちまたでの評判は高いし系統から言って私の好みには合うはずの小説なのに、何となく途中で座礁してそのまま長いことほったらかし、ついには引越しの際に諦めて処分したものの、何となく気になって図書館で借りて読んだ(何だそりゃ)。
で今回読んでて、投げた理由がちょっとわかった。描写がくどくてどうにもノれないという以上に、出てくる人出てくる人がどうにも嫌なのだ。どこがどうとも明確にはわからないんだけど、イヤーな感じで、実在したら友達どころか関わり合いにもならないようにするだろう人たちの話をなんで自分は今ここで読んでるんだろうという気分になる。しかし逆に言えば、作中の人物造型でここまでイヤーな気持ちにさせてくれるというのも作者の力量には違いない。構成や文章自体はとてつもなく巧いのがわかる。エピローグに持っていく最終部分の流れは圧巻。今後も気になってチェックしてしまう作家だろうと思うけど、どうにも作品を所有する気には今のところなれない。
ところで作中の児童文学作家は何となくエドワード・ゴーリー(実際に作中にも出てくる)のイメージだったんだけど、ゴーリーは結構好きなんだよな。あと津原泰水がキャロルを絶賛していて、この人もイヤーな感じの小説(褒めてます)を書かせたら右に出る者はなくて、でも気に入っているんだが、この違いは何だろう。ゴーリーと津原さんの作品に漂っているブラックなユーモア感覚のおかげかな。あと津原さん書くところの猿渡さんが酒好きで豆腐好きなのがいい。