ウースター家の掟
- 『ウースター家の掟』 P.G.ウッドハウス/森村たまき 訳(国書刊行会)
このマンネリの安心感たるや。相変わらずバーティーはピッピーとかプップーとか軽薄丸出しで、ジーヴスは悪辣で、ガッシーは挙動不審で、ダリア叔母さんは獰猛だ。とは言え、この長編はこれまでのシリーズの中ではピカイチのドミノ倒しプロットで素晴らしい。どこまで広げるんだとハラハラさせるほど広げておいた大風呂敷を一気に畳み込む手腕は爽快。しかし英国紳士諸君がパブやらクラブやらで女抜きでうだうだしたがる理由もちょっとわかりますわな。今回出てくる女性陣三名のうち、ダリア叔母さんを除く二人までがちょっと耐えられない不条理キャラ。それでいて可憐な美少女というのがタチが悪い。あ、ダリア叔母さんは今回女っぷりを上げました。むしろ漢っぷりというべきか。