tatsumidou2007-09-16

森村泰昌の「美の教室、静聴せよ」を観てきた。横浜美術館の会期ぎりぎり滑り込みセーフ。展示は全体が授業形式になっていて、森村さんが自分で作った音声ガイドでナビされながら一時間目から六時間目までの教室を回るという、珍しい形式の展覧会。非常に作者のコントロールが強いように一見思われるんだけど、個々人の作品の解釈にまでは決して踏み込まない絶妙のナビで感心しました。音声ガイドは大きなテーマの提示と、いわばタイムキーパーの役割に徹していて、最初のホームルームでの「自由に見るってどうすればいいの?」という問題提起に対する森村さんの回答とも思われる。
実は一時間目から六時間目までの展示作品はご本人のサイトなどで見たことがあったので、今回初見は放課後の三島由紀夫に扮した映像作品だけだったのだが、これがすごいインパクト。森村さんが三島になって、三島の市ヶ谷駐屯所での演説を模したもので、演説の内容を芸術に置き換えてもじったものとは言え、笑うところなんか皆無の真剣演技。えええ、この人大マジか…? と一瞬引いたものの、演説が終わると三島(=森村)の眼前に広がる、市民が平和にうろうろする広場が映し出されて、やっぱり大マジなものにはどこか滑稽なところがある、という視点が残っている。絶叫演説する方も寒いのだが、絶叫演説を前に平和に無関心に広場をうろうろできる私たちも寒いのだと気づかせてくれる。