を観た(1/12)。渋谷ユーロスペース
うーん、映像は重厚で美しいし、エドモンドは老醜の孤独と悲哀を見事に現わしているし、マダムは謎めいていてエドモンドとのやりとりは緊張感溢れてスリリングなのですが……正直言って映画にする必要あるのかなーと思ってしまった。モノローグが多すぎる。原作を読んでいないので、原作もああいう感じなのかはわかりませんが、あの脚本なら、エドモンドとマダムの二人芝居の舞台劇にしたほうがいいんじゃないかと思いました。ラストでエドモンドが自分の死をキリスト教的救いに結びつけて味わう幸福感と、マダムの酷薄な手際を対比させるあたりが、ヨーロッパ人らしい意地悪さだ。

評判通り、良い映画でした。いやあ合衆国にも腐女子はいるんだなあと思っていたらアン・リー監督は男性だったのでした(迂闊)。でも原作小説の作者は女性らしいですね。男はみんなどこかゲイだってことは、本当はみんな知っていることだと思うんだけど、いまだにゲイだってだけでリンチ殺人が起きるアメリカって国は大変なとこだ。
一つだけ難を言うなら、ジェイク・ギレンホールの童顔に髭は目も当てられないくらい似合わない。彼、どこかで見た顔だなあと思ったら、ゾディアックにオタク・イラストレーター役で出てましたね。

あと、映像の配色と清潔さに非常に気を配った映画だと感心しました。パノラマの映像美もさることながら、その最たるものが、主役の二人の服装。二人の帽子からジーンズの色の濃さに至るまで、肌の色合いや、髪や瞳の色にちゃんとマッチするよう選んであり、さらに二人がその服装で乗る馬も、服の色が映える毛色のものが選ばれている。そのおかげで主役二人がとても美しく撮られているのが、この映画が説得力を持って成功した一因だと思う。

追記。配色と清潔さに気を配るってことは、反面リアル感が減るということでもある。確かに、彼らは貧しくてガテン系職種のはずなのに、汚くもなく歳取ってよれた感もなく、最後まで美しいままなのでした。その点、とても観念的。この監督、絶対腐女子脳があると思う。