チーム・バチスタの栄光

図書館の予約待ちが思いがけず早く回ってきた。評判通り、確かに面白かった。白鳥は某別シリーズのカバに喩えられるトンデモ精神科医とキャラがかぶらないでもないけど、テンポ良く、結構難しい医療系の説明をうまく噛み砕いて、ミステリとして最後まで面白く読ませる文章は素晴らしい。後ろの選評ではやたらと「キャラ立ち」ばかりが褒められてたけど、それだけじゃないのは明らかだ。
ただ、この小説だけを特にあげつらうわけじゃなく、最近のエンタメ系の小説全般について思うことなんだが、「キャラ」とか「テンポ」(「ノリ」って言うべきか)とかばかりが重視されるせいか、読んでて小説というより、良く出来た脚本でも読んでいるような気分にさせられる。読みながら頭の中でそのままドラマ化できちゃうような。それだけ具体的映像の喚起力があるってことなのかもしれないけど、小説という媒体を選ぶからには、文章そのものを読む愉しみが欲しいよなあと思ったりもする。まあ中井英夫とか京極とか、高村薫くらいまで重量級に描き込めとは言いませんが(このへんまで来ると本の表紙を開くのに圧力を感じる)。ま、純粋に好みの問題ですがね。