副王家の一族

『副王家の一族』を観てきた。Bunkamuraル・シネマ。
イタリア統一期のシチリア貴族、と来たら『山猫』と引き比べてしまうのは致し方ないと思うのだが、んもう『山猫』は凄すぎるんだよな。罪作り。あれを映像的に超えるゴージャスさはもう無理なのかもしれん。
しかし映像面を抜いたとしても、『山猫』は栄華の没落、本作は権力への執着、とテーマも結構違っているんだけど、それでも本作のほうが小粒な感じはする。パパ・ウゼダ公爵は家父長制の権化だが、年老いるにつれて単に迷信深い爺と化してしまって、悪役としてのキャラ立ちはイマイチだ。それに反発する役柄の若ウゼダ公爵も、単に空気読めない少々がさつで要領の悪い息子って感じで、パパの前でタイミング悪くKYぶりを晒して疎んじられ、飲んだくれたり早とちりして素人娘を手籠めにしてみたりで問題を起こしたので人生勉強がてらに旅行に出され、パパが臨終のときに帰ってきて棚ボタ式に公爵位を継ぎ、そうなったら継承した家が惜しくなってコネを伝って新政府に日和る。なんかねえ…ぼーっと日和ってたら生きてこられました、みたいな感じが漂うのだ。
この原作をヴィスコンティも映画化したがって結局果たせなかったらしいけど、それは果たせなかったんじゃなくて、果たさなかったんじゃないかなと思ってしまう。だって、『山猫』のほうがドラマチックだもん、本作のほうが地味だもん。
いろいろ書きましたが、それでもコスプレ映画としての水準は十分高いです。シチリアーノのスペイン風ゴス系絢爛衣装と重厚なロケを楽しみました。