海軍反省会

座談会の記録という性質から仕方ない部分もあるとはいえ、発言ほぼそのまんまを文字起こしした記述を延々読むのは正直苦行のようでした。しかもみんな持って回った言い方で、他の出席者に遠慮があるのか、奥歯にものが挟まったような発言も多い。テーマもあんまり定まっておらず、同じような議論を行きつ戻りつする。論調の大勢は「教育が悪かった」で、ほとんどが教育訓練の話。しかしね。何故無謀とわかっていたあの戦争を開戦し敗戦したのか、の結論が、「教育が悪かったです」ではあんまりなんでは…。
とまあ本編にはがっかりしていたのですが、巻末の資料。これは読み応えありました。もう最初っからこれだけを読めばよかった。
一つは敗戦直後に米内海軍大臣が野村直邦を委員長として調査委員会を設置して敗戦原因の調査をさせたときの調査結果資料。これはもう、あまりにも出来すぎじゃないかってぐらい隅から隅まで痛烈な反省録になっていて、指摘も至極真っ当。しかし戦争責任の段になると、個々人の責任の追及は有耶無耶にして、「国民全員に責任があるけれども全員が責任取るって言うのは現実問題無理だから、年寄りが責任取って全体に十歳くらい若返りさせたらどうか」、みたいな大雑把な話になっている。敗戦の原因としては「責任所在が不明確」というのを指摘しているにも関わらず、こういう結論になっちゃうんだ? あ、「不明確」だからこういう結論になるのか。
もう一つは、反省会の出席者で発起人の野元為輝が作成した資料で、反省会で配られたものに後で加筆したもの。もう反省会の内容は、これだけ読めば大体わかる感じ。序説の部分には、「反省会でいろいろ話を聞けるのはいいけど、海軍の体質的に結局各論にばかり拘泥しちゃいそうだから、要点をまとめたレジュメとしてこれを作ったけど、結局やっぱり賛同は得られませんでしたあ」(大意)なんて書いてあって、正直すぎである。
しかし、敗戦して却ってよかった、なんて少なくとも旧軍人からは聞きたくない言葉だな。