ドン・ジョヴァンニ

ドン・ジョヴァンニ』を観て来た。川崎アートシアター。(6/20)
歴史物としては考証や映像がちょっとアレだが、コスプレものとしては無類に楽しい。むしろコスチュームの効果を優先して時代考証の正確さを必ずしも追求していないあたり、舞台作品(まさにオペラ)の発想なのかもしれない。
イタリアの端正でシックなファッション。ウィーンのケーキのクリームのような重ためパステルカラー。ロココファッションはエロゴス系、かつパンク系で、国際都市の混沌をよく表している。かぶさってくる音楽は、イタリアではヴィヴァルディ、ウィーンではバッハとモーツァルト。こうやって聴くと、ヴィヴァルディの四季ってすごく前衛的。
もうファッションと音楽優先で、ストーリーは二の次という感じ。背景もオペラの舞台っぽい感じを志向したのだろうけど、ちょっとハリボテ感いっぱいで何ともな。あのメフィストフェレスのような容貌の遊び人ダ・ポンテが、ヴェネツィアの異端審問を逃れてウィーンにやってきてオペラで一発当てて、一目惚れした女の子と結婚して子供つくって最後はニューヨークで80余歳の生涯を閉じるっていうのは、何だか納得できない展開だ。でもドン・ジョヴァンニの完成から数年で極貧のうちに亡くなった相方モーツァルトと対比すると、そういう人生も十分に悪魔的と言えるかもしれない。
アドリアーナ役のケテワン・ケモクリーゼはグルジア出身の現役のオペラ歌手だそうだけど、彼女が何ともコケティッシュでとても良かった。