ファウストの劫罰

二期会オペラ『ファウストの劫罰』を観て来た。(6/17)
アール・カオス演出・出演のダンスつきオペラを観るのは『ダフネ』以来二回目。ダフネがあまりに凄まじすぎたもので、今回もアール・カオス目当てで来たと言っても過言ではない。期待に違わず凄かった……オペラ舞台映画問わず、こんな凄い演出はここしばらくお目にかかってない。
ダークで重厚で世紀末的な雰囲気に、群衆の一人ひとりまで一糸乱れぬ計算しつくされた動き。特に酒場の酔っ払いの大合唱の部分の視覚効果には感心した。茶系統で暗くくすんだ色合いの服装の群衆が赤みがかった照明の下に蠢く様は、例えばカラヴァッジョが描くような暗い背景の中に蠢く群衆を描いた西洋画そのまんまの風景。ダンサーのうねるような身体の動きは、宗教画に描かれた聖人や天使の捩れた不自然な姿勢や翻る衣の様子を再現しているよう。ファウストメフィストフェレスと馬に乗って駆ける場面など、映像まで駆使して疾走感を表していた。もー今回もすみません、正直歌がかすむくらいの演出でした。堪能した!
音楽のほうは、冒頭を聴いてアレアレー、オケ練習不足か? と思ったけど、尻上がりに良くなっていった。メゾソプラノの林美智子さんが急遽体調不良のキャンセルで、カバーの若いソプラノさんが歌ったけど、まあまあ良かったんではないかと思う。個人的にはとても透明感あって好きなタイプの声。もうちょっとパワーがあれば良かったけど、まだ大学院生という若さでこれが最初の大舞台のようだったし、これからどんどん良くなるんじゃないかしら(上から目線)。カーテンコールのとき、え、私出るんですか? みたいな初々しさで可愛かった。
しかしベルリオーズはマッチョな作曲家ですね。女は添え物っていう扱いがあからさまなストーリーと歌の構成でした(ソプラノ歌うとこほんのちょっとしかないよー)。まあ話が男二人の葛藤メインのアレだから仕方ないのか。