ちびの聖者/グロテスク

手際よいストーリーテリングってこういうことを言うんだろう。読んでいてストレスのない、ほんのりじんわり快い小説。パリの旧市場の描写とお母さんの人物像が好きだった。

やりきれない話だ。つくづくこの人はクラス(階級社会)とそのヘドロを描くのが天才的に上手い。人物造形はちょっとデフォルメされすぎているきらいがあるけれども、描き出される世界は有無を言わさない説得力。佐野眞一の『東電OL殺人事件』よりもずっと心抉られる説得力。女が書くだけに女の内面の暴露っぷりが容赦ない。