生き残った帝国ビサンティン/ARRIVAL

生き残った帝国ビザンティン (講談社学術文庫 1866) The Arrival

大分駆け足ではあるものの、ビサンティン帝国一千年史をわかりやすく概括する良書。歴史書というより物語と解説書のようで、素人にも読みやすい。ただ、『ビサンツ皇妃列伝』とかぶる部分も多いので、これを読んだ後だと、もうちょっと詳しく掘り下げた内容が欲しかったかなーとも思ってしまう。まあこれは個人的な勝手な事情。
しっかりしているようなgdgdなような帝国の興隆を見ていると、どうしてもやはり「西欧」のイメージではなく、専制君主制で中央集権的(建前上は)というところも、建前を大事にするところも、アジア的な香りを感じる。末期の頃にトルコの脅威をひしひしと感じながらも、「枢機卿の四角帽よりスルタンのターバンのほうがまし」と言っていたビザンツ人の「西欧」との距離感は印象的だ。

  • "ARRIVAL" Shuan Tan (Arthur A. Levine Books)

絵のない絵本。移民の物語。ストーリー的には楽観的すぎてちょっとゆるいが、何せ絵が良いのだ。やわらかいパステル(だよね? 鉛筆かな?)のタッチと、端正だけど全てが丸みを帯びたフォルムと、シュールだけとどこかとぼけた風情を漂わせた謎の生き物たち。人のひとりひとりに必ず寄りそうようにくっついている、この謎の生き物たちが良いんだよねえ。そして、やってきた新しい土地の、光り輝いて見えるさまが。移民であったり、上京してきた田舎者であったりすれば誰でも、あの都市の輝きには、現実を知った後の苦味を感じながらも、始めて目にしたときの感動を思い出して、懐かしくも魅了されずにはいられないだろう。