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超哲学者マンソンジュ氏

『超哲学者マンソンジュ氏』 マルカム・ブラドベリ/柴田元幸 訳(平凡社) 「もしあなたがここにいるのなら、あなたはあまりに遠くまで読み進んできたのだ」と彼は謎めいた言葉を綴る。「もしあなたがここにいるのなら、あなたはここにいるべきではない。あ…

笑いごとじゃない

『笑いごとじゃない』 J.ヘラー&S.ヴォーゲル/中野恵津子 訳(ちくま文庫) 体力が衰えるにつれ、私の権勢は日増しに強くなっていった。私は自分には人に任務を与えるという天才的能力があることを再発見していた。私は病院よりホワイトハウスにいるべき人…

太陽の塔

『太陽の塔』 森見登美彦(新潮文庫) 「いちおうめでたいことではないか」 私は言った。 「ありえねえよう。何かの間違いだよぅ」 高藪は泣き声で言った。 「何言ってる。せっかくの好機を。これを逃すとあんた、もう本当にダメだぞ」 「だって、俺によぅ、…

尾崎翠集成 下

『尾崎翠集成 下』 中野翠 編(ちくま文庫)(4/18) 若書きのものはあまり好きじゃない。けど「アップルパイの午後」だけはすごく好きだ。 妹:私がその作文の先生の先生だったら「聯想の飛躍を知らざる者に死あれ」と書くまでよ。 (p299,「アップルパイの午…

喪男の哲学史

ストレスのあまりこんなの買って一気読みしてしまった。 『喪男の哲学史』 本田透(講談社) いやもう最高でした。 ヲタ用語とネット用語炸裂でヲタでネット中毒なイマドキの人間には腹がよじれるくらい面白い上に、西洋哲学通史としては最高の入門書だと思…

アーサー・ミラー全集1

『アーサー・ミラー全集1』 倉橋健 訳(早川書房) 『みんな我が子』と『セールスマンの死』が入っている。職場の同僚の劇団が『セールスマンの死』をやるというので読んでみたけど、これものすごく身につまされる。これは親の世代になってから読んだほうが…

 『四畳半神話体系』 森見登美彦

「我々の大方の苦悩は、あり得べき別の人生を夢想することから始まる。自分の可能性という当てにならないものに望みを託すことが諸悪の根元だ。今ある君以外、ほかの何者にもなれない自分を認めなくてはいけない。君がいわゆる薔薇色の学生生活を満喫できる…

『パロマー』 イタロ・カルヴィーノ/和田忠彦 訳

誰も彼もが躍起になって意見やら判断やらを言い立てるのが御時世だという国にいるせいで、パロマー氏には、なにか主張する前に決まって三度、言葉をかみしめる習慣が身についてしまった。もし三度めに言葉を反芻する段になっても、今から自分の言おうとして…

『トリストラム・シャンディ』 ロレンス・スターン/朱牟田夏雄 訳

行為にあらず、 行為に関する意見こそ、人を動かすものぞ。――エピクテータス まずこの巻頭引用からしてこの本の全てを語っています。 脱線は、争う余地もなく、日光です。――読書の生命、真髄は、脱線です。 (岩波文庫版、上巻、p131) そして、このひとくだり…

 『ナボコフのドン・キホーテ講義』 ウラジーミル・ナボコフ/行方昭夫・河島弘美 訳

著作の芸術性は必ずしもその作品の倫理性に影響を受けない。 (晶文社版、p229) それを実地で証明したのが『ロリータ』だったわけですね。

 #4『最後の晩餐の作り方』 ジョン・ランチェスター/小梨直 訳

背表紙を眺めているだけでぴんと来るというか、妙な吸引力を感じるというか、自分好みの本に対する嗅覚が不思議に働く瞬間があるんですが、今回もその伝で大当たりを掴みました。古本屋で発見。しかし強力リコメンドしようにも、これももう絶版のようですね…

『西洋音楽史 「クラシック」の黄昏』 岡田暁生(中公新書) ここでもう一度「西洋芸術音楽」の定義を簡単にまとめておこう。それは「知的エリート階級(聖職者ならびに貴族)によって支えられ」、「主としてイタリア・フランス・ドイツを中心に発達した」、…

 『不在の騎士』 イタロ・カルヴィーノ/米川良夫 訳

「それじゃあ、シャルルマーニュの軍勢のなかには、かくかくしかじかの名前と肩書きを備えた騎士で、その上にすぐれた戦士、勇猛無類の大将でありながら、存在する必要なんかないってこともあるんですか?!」 「しいっ! そんなことは誰も言ってやしないぞ…

『悪童日記』 アゴタ・クリストフ/堀茂樹 訳(ハヤカワepi文庫) その後、練習を重ねたぼくらは、目に当てる三角の布も耳に詰める草も必要としなくなった。盲人を演じる者は単に視線を自分の内側に向け、聾者役は、あらゆる音に対して耳を閉じるのだ。 (p58…

『ウンコな議論』 ハリー・G・フランクファート/山形浩生 訳(筑摩書房) 勿論題名で買ったに決まってます。こういう下ネタには弱くってねえ。内容は別に下ネタじゃありませんよ。(まあちょっとそれを期待したフシもありますが) 「おためごかしですな」と…

 『書を捨てよ、町へ出よう』 寺山修司

私は革命に興味をもっていたが、革命後の社会には興味を持ってはいなかった。 (角川文庫版、p55)いかにもアジテーターらしい言い草。

 『桜の園』 チェーホフ/小野理子 訳

トロフィーモフ: 昨日は長時間喋って、何の結論も得られませんでしたね。あなたがたのおっしゃる誇り高き人間には、少々摩訶不思議なところがあります。あるいはあなたがたにもそれなりに理はあるかも知れません。が、率直に真正面から論ずれば、人間が生理…

 『フーコーの振り子』 ウンベルト・エーコ/藤村昌昭 訳

この私は地球と、そしてサン・マルタン・デ・シャンやパリの町全体が私と、すべてのものが『振り子』の下で回転しているのであり、実際には『振り子』の振動面だってその方向を変えてはいないのだ。なぜなら、『振り子』を吊した糸を無限に延長したその先の…

 『四循環』 J.L.ボルヘス/鼓直 訳

僅かばかりの勇気と信仰心しか持ち合わせないわれわれにとって、ハッピー・エンドは読者を喜ばせる商策でしかない。われわれが信じているのは、天国ではなくて地獄である。 (思潮社 『ボルヘス詩集』 鼓直 訳編より p85)

 『月は無慈悲な夜の女王』 ロバート・A・ハインライン/矢野徹 訳

「…おれたちは月世界人なんだ。月世界人は賭けるんだ。なあ、おれたちは賭けなきゃいけないんだ! やつらはわれわれを宇宙船で送りこみ、われわれは生きのびていかれないだろうと賭けやがったんだ。おれたちはやつらの思惑をはずしてやった。こんども驚かせ…

 ロバート・ケネディの演説

ロバート・ケネディ、キング牧師暗殺に寄せる演説。 http://www22.cds.ne.jp/~tatsumi/pocket/RFK_MLK.html ロバート・ケネディの『13日間 キューバ危機回顧録』を読んでて、関連するJFKの演説の原文を探してたらこっちが先にヒットした。アメリカは決して好…

『石の中の蜘蛛』 浅暮三文

自分が誰であるのか、それは結局のところ本人しか知らないのだ。そしてそれを明かす気がないならば、それは沈黙の中にいつまでも沈んでいる。 都市での生活では自分が誰であるかをいつでも捨て去ることができるのだ。いや、都市に存在するには、ある部分それ…

"Blue & Green" Virginia Woolf

GREEN THE POINTED FINGERS of glass hang downwards. The light slides down the glass, and drops a pool of green. All day long the ten fingers of the lustre drop green upon the marble. The feathers of parakeetsュtheir harsh criesュsharp blade…

『噴版 悪魔の辞典』 安野光雅・なだいなだ・日高敏隆・別役実・横田順彌

【二日酔い】ふつかよい これを知らないものは、自己の存在感を感じたことのない人だ。これを経験すると、自分には確かに頭というものがあり、胃というものがあり、食欲というものがあったことが、はっきりと自覚される。 (なだ) (平凡社ライブラリー版、…

『ふた首穴のセーター』 江坂遊

首の穴が二つあいているセーターを手に入れた。どっちに首を出すかによって違った人生を送ることができるのだ。 (本間祐・編『超短編アンソロジー』(ちくま文庫)より、p66)

『敵は海賊・海賊版』 神林長平

ラジェンドラ。 (ハヤカワ文庫版 p76)

『架空の王国』 高野史緒

「国境はあるからこそ面白いんだ。アメリカ人がヨコヅナになったって、ロシア人がタンゴを作曲したって、別にいいじゃないか。それは恋をするようなものだ。誰にも止められない」 (中央公論社版 p245)

ルーカス・マイヤーズによる回想録

シルヴィア・プラスの創作への姿勢についてのルーカス・マイヤーズの意見。 詩とはどこかから不意に詩人を襲うものであるはずなのに、純粋に意志をもって詩を書くのは正当でないと思ったのだ。 (p438) テッドとシルヴィアが共有していたのは、芸術に対する…

『ニューロマンサー』 ウィリアム・ギブスン/黒丸尚 訳

港の空の色は、空きチャンネルに合わせたTVの色だった。 (ハヤカワ文庫版 p11)定番ですね。ついでにもう一発。 「ニューロマンサー」 と少年は、切れ長の灰色の目を、昇る朝日に細め、 「この細道が死者の地へとつながる。…(中略)…ニューロは神経、銀色…

『たそがれに還る』 光瀬龍

宇宙に於ては遠方を見ることは過去を見ることである――この言葉の意味を考える時、われわれははじめて宇宙のほんとうの姿に触れたような気がする。宇宙では実に現在という時点と、数十億年前の過去とが一つにつながっているのである。 (ハルキ文庫版 p133)